本論文では、2次元手指画像における掌の向き推定について述べる。 近年、マンマシンインタフェースに手指動作を用いることが注目されている。 2次元画像を入力として手指形状を推定する手法には大きく分けて、2次元画像 を解析して形状を推定する手法と、3次元手指モデルを用いる手法がある。 前者は単純な画像処理手法を組み合わせた手法が主であり、処理時間は短いが、 高精度な推定が困難である。 後者の多くは、 入力画像との類似度が高まるように、モデルを初期姿勢から徐々に変形する手 法である。 しかしながら高精度な姿勢推定が可能な反面、 自由度が大きく探索のための計算量が膨大になり時間を要す。
そこで、2次元手指画像を解析することにより手指形状を大まかに推定し、 その姿勢を3次元手指モデルの初期姿勢とすることで、高速かつ高精度な 手指姿勢推定法の実現を目指す。 本稿では、2次元画像解析による手指形状推定の準備として、掌の向き推定につ いて述べる。これは掌の向きを得ることにより、2次元画像解析で指姿勢を推定する ことが容易になるためである。 画像中の掌領域は、指姿勢に関係なく掌の向きによって変化する。 このため、2次元画像解析により掌領域を抽出し、掌形状辞書を探索することに より掌の向き推定が可能である。 手指画像から直接掌領域を求めることは困難である。このため、手指画像に対 して距離変換、しきい値処理等を行うことで得られる指領域と、手指領域との 差分を取ることで掌領域を求める。 本手法を実際の手指画像に適用した結果、良好に掌の向きが推定可能であるこ とを確認した。