本研究では、3次元腹部X線CT像から大動脈領域を自動で抽出する手法を提案する。 3次元CT像を利用した診断支援システムにおいて、解剖学的知識を組み込んだ知的な 支援を実現するためには、事前に各臓器領域を認識することが不可欠である。
従来法では構造要素を球とする領域拡張法を適用することにより大動脈領域を抽出 していた。しかし、この方法では大動脈以外の領域を抽出する場合があった。また、 領域拡張の開始点は手入力であった。 そこで、本手法では大動脈が体軸方向に走行している情報を利用して領域拡張を体 軸方向にのみ行い、胸部から腹部全体に渡る大動脈領域を抽出する。 また自動で大動脈領域拡張の開始点を得るために、先に背骨を領域拡張法によって 抽出する。次に腹部における背骨と大動脈の解剖学的な位置関係から、大動脈領域内 部の1点を推定することによって開始点を求める。
本手法を3次元腹部X線CT像5例に適用した結果、従来法で生じていた誤抽出を減少 させることができ、概ね良好な結果が得られた。