本研究では,腹部X線CT像における大腸ひだ領域を抽出する手法の開発を行った. 大腸内壁には半月ひだ(haustra)があり,その領域を抽出して計算機で認識すること によって,大腸のCAD(Computer Aided Diagnosis)システムに利用できると考えられ る.
例えば,仮想化内視鏡システムを用いて大腸を観察する際に,ひだによって死角が 生じ病変部などを見落とす危険性がある.そこで,ひだの情報を用いることによって 見落としを減らすことができると考えられる.また,ポリープ検出に関する研究が盛 んに行われているが,ひだ領域の情報を用いて検出処理を行うことで,ポリープの抽 出精度が向上すると考えられる.
本手法では,以下の処理手順でひだ領域を抽出する.まず原画像にメディアンフィ ルタを施して孤立した突起や窪みを取り除く.次にオープニング演算を行って,構造 要素の直径以下の幅の突起状の領域を除去する.この処理によって大腸ひだを含む領 域が削られた画像が生成される.そして,除去前の画像と除去後の画像の差を取った 画像を生成し,ひだの候補領域を得る.ひだの候補領域には大腸ひだ領域が含まれる が,それ以外にも骨の先端などの突起状の領域なども含まれるため,大腸領域以外の 不要成分を除去する必要がある.そこで,領域拡張法で得た大腸領域を用いて不要成 分を除去することで,大腸ひだ領域を抽出することができる.
この手法を腹部X線CT像および人工図形に適用した結果,おおむね良好にひだ領域 を抽出できることを確認した.