本論文では，日英同時通訳コーパスにおけるフレーズ対応関係の推定手法を提 案する． 対訳コーパスの対応関係を自動的に獲得する手法として，対訳語の一致に関す る語彙情報やフレーズの長さに関する統計的情報を用いて推定する方法がある． しかし，話し言葉対訳コーパスの場合，話し言葉特有の表現が含まれていたり， 同時通訳者が意訳して翻訳していることがあり，対応関係にあるフレーズにお いても対訳語が存在しないことやフレーズの長さが全く違うことがある． このため，語彙情報や統計的情報を用いて推定する方法では，対応関係を正し く得られない可能性がある． そこで本手法では，語彙情報に加え，発話の発声時間に関する情報を利用して 対応関係を推定する． 同時通訳者は，「話者よりも先行して発話を開始することはない」，「一定時 間内に発話を開始する」という2つの時間的な制約の存在を仮定することによっ て，誤った対応関係の推定を避けることができる． フレーズ対応関係の推定実験を通して，本手法の有効性を確認した．