object calculusは,オブジェクト指向言語を形式化したものである. これまでに, そのobject calculusに例外処理機能を表現できるように拡張したものが 提案された. これによって,計算の途中で例外が発生したときに,計算を止めて例外処理に移るよ うな 例外処理機能を表現することができる. しかし,例外の中に例外があるというネストした例外に対しての明確な 定義がなされていない.
本研究では,そのネストした例外の内側の例外を失わないようにcalculusの改良をす る.例外のネストを扱うために,まず型システムを拡張し, すべての型が例外を持つ可能性があるように 型の定義を修正する. それに伴って必要となる型の構造等価性を取り入れる. 次に 構文,操作意味論も新しい型システムに合うように 改良する.
この改良によって, 例外が内側から上がってくるような 場合でも内側の例外を失うことなく外側に伝えていくことができる.