氏名: Tiangtae Narathip (489734057)

論文題目: 角をもつ2次元領域におけるPoisson方程式の高精度解法に関する研究


論文概要

 自然現象を記述する偏微分方程式を数値的に解くための方法には,差分法や有限要素法 などが知られている.しかし,境界やデータが滑らかでない場合,例えば,対象とする 領域が多角形領域である場合,頂点が解の特異点となることが多い.問題を高 い精度で解くためには,頂点に生じる解の特異性をうまく表現する必要がある. 有限要素法では,頂点の近傍で要素を細分して精度の向上を図る.しかし, そうすることにより,解くべき線形方程式は大規模化し,計算量も記憶容量も 膨大なものが要求される.

 本研究では,精度向上のために,角をもつ領域で定義されたPoisson方程 式の境界値問題に対して無限要素法を提案した.また,この方法により 得られた無限次元線形方程式の解を実際には有限次元方程式の解で近似するの で,それに関する打ち切り誤差解析を行った.さらに,提案した解法は自動 的に次元数を決定する機能をもち,高速sine変換を用いることができるので, 高速に近似解を求めることができる.しかしながら,この解法を用いて特異点 が存在する問題を高精度で解くためには,依然として膨大な計算量が必要とな る.

 境界に特異性が存在する問題に対し,大変有効な解法として Sinc-Galerkin法が知られている.この方法による離散化誤差は標本点数に対して 指数関数的に減少するという特長をもつ.我々は Schwarz Alternating法とSinc-Galerkin法を組み合わせ, 多角領域で定義されたPoisson方程式の解法を提案した.具体的には,対象とする領 域をいくつかの扇形領域で被い,各扇形領域には角の近傍における特異性を 処理するために2重指数関数型変換公式(DE公式)によるSinc-Galerkin法を 用いた.この方法による近似解の 精度が非常高いことが数実験的に確認された.しかし,この方法では,方程式 を積分する際に,積分の標本点幅を効率良く決める方法がなく,また,正則な端点の 近傍には必要以上の標本点を多くとってしまうという欠点がある.

 そこで、我々は,扇形領域の動径方向,角度方向の双方に Legendre-Galerkin法を用いてPoisson方程式を解く方法を提案した.この方法 による近似解の誤差が指数関数的に減少し、きわめて高精度の近似解が得られ た.また、Schwarz Alternating法と組み合わせることにより、三角形領域のような 多角領域で定義された問題に対しても大変有効であることが数値実験的に確認 できた.

 しかし,この方法では,文字通り,Legendre多項式を基底関数とする ため,離散化方程式の構成と近似解の値の計算に要する計算量が大きい.そこ で,我々は,扇形領域の動径方向に,Cosine関数を,角度方向にChebyshev多 項式を基底関数とする解法を提案した.この方法では,高速フーリエ変換 (FFT)を用いることができるので,離散化方程式に要する計算時間を減少させ ることができる.また,近似解の値もFFTによる高速計算が可能となった.


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提出時刻:2001/02/09 13:23:34