形状モデリングは,コンピュータグラフィクス(CG)やバーチャルリアリティにおいて
3Dシーンを構成するための基本的かつ重要な役割を持つ.これらの形状モデリング
手法の大部分は,ユーザが三面図などを見ながら点や直線,制御点を動かすことに
より行われる.形状デザインの最終段階では数値的正確さが要求されるため,このよ
うな方式に基づくCADは必須であるが,形状デザインの初期段階では正確さよりも
むしろ直観的な形状創成方式が望まれる.このような研究としてはCSGを用いた
仮想彫刻が挙げられるが,この手法では滑らかな曲面を表現することができない.
一般に,制御点方式によるパラメトリックパッチは自由曲面の内部表現をするための
強力な手段であり,CADにおいて広く色々な関数を用いられているが,
その変形手法は多くの場合,
制御点を直接移動させたり,
曲率を変化させることにより形状を変化させたりするような
手法が用いられる.これらの手法はいずれも直観的な変形手法とはいえない.
本稿では,上のいずれの変形手法にも属さないパラメトリック曲面の
直観的変形方式について述べる.その基礎検討として,数理的に最も素直でかつ
単純な双三次ベジエパッチを採用した.
本方式では,仮想空間内における仮想物体は,双三次ベジエパッチを
つなぎ合わせたベジエ曲面により表される.ベジエパッチの接続は
パッチの境界線において強い制約がかかるため,簡易的に処理を行うために
仮想物体を構成するパッチのデータ構造はベジエパッチの格子状の並びとし,
縮退点を設けることにより閉じた物体でも表現可能とした.
各ベジエパッチはパラメータ空間で等分に区切られた16個のサンプル点を
持っている.変形後の理想形状を定義する形状関数から出力されるフロー
ベクトルに従ってこれらの点を理想形状上に再配置し,新たに提案するバーンスタイン
逆写像を用いて新たなベジエパッチの制御点座標値を計算する.
しかし,上のプロセスではパッチ間の連続性が保証されない.ベジエパ
ッチ間の接続は,境界線上の制御点とそれをはさむ制御点が直線上に並
ぶことにより$C^1$連続を保証可能である.また,各パッチが双三次ベジエ
パッチであるという条件を用いて,パッチの角の制御点と隣接する制御
点をひとまとめにした連結制御点群という概念を取り入れた.連結制御
点群は縮退点と非縮退点の2種類に分類され,それぞれに対し
パッチを滑らかに接続するための制御点調整手順を開発した.
以上述べた方式に基づいて,サイバーグローブと三次元位置センサを用いて
インタラクティブなリアルタイム変形システムへ応用した.今後の課題は,
本方式では仮想物体を形成するパッチの枚数に依存して処理時間が
増加するため,変形プロセス高速化が挙げられる.また,より使いやすい
ユーザインターフェースの開発し,このシステムを用いた仮想粘土細工
システムの実現を行う予定である.