本論文では、内視鏡ナビゲーションシステムにおける増強現実感画像生成手法につい て述べる。 内視鏡ナビゲーションシステムは実内視鏡と仮想化内視鏡を融合したシステムであ り、 実際の内視鏡診断・検査の際に仮想化内視鏡でしか得られない情報(特徴量計測値・ 壁面下の情報) を組合せて提示するシステムである。情報をユーザである医師に提示するには、 実際の術野の画像と仮想化内視鏡の画像を正確に重ね合わせて表示する必要がある。 しかし単純に合成するだけでは、実空間と仮想空間の奥行き・距離感の違いにより、 両者の対応が直感的に理解できる画像を得ることはできず、仮想化内視鏡で得られる 情報の何を、 どのように提示するかについての検討が必要とされていた。
内視鏡ナビゲーションシステムで要求される情報のひとつとして、 気管支周辺の血管の位置情報があげられる。医師が内視鏡で生態組織検査を行う場 合、 穿刺により細胞を採取するが、その際気管支に隣接する血管の位置が確認できること が望まれている。 そこで本論文では気管支周辺の血管の位置情報を実内視鏡画像上で合成表示する手法 について提案する。 本手法ではまず3次元胸部X 線CT像から抽出された大動脈・肺動脈領域に、 気管支内壁からの距離をボクセル値として格納した3次元画像を生成する。 このようにして得られた画像を距離値ごとに色分けしてレンダリングし、実内視鏡画 像と合成する。 また、もうひとつの方法として、視線方向での血管と気管支内壁の距離を実内視鏡画 像にマッピングする 方法についても検討を行う。
これらの手法を適用して実内視鏡画像と仮想化内視鏡画像の合成画像を生成した結 果、 気管支内壁と血管の距離が直感的に理解できる画像を得ることができた。