氏名: 内藤 克浩 (289934192)

論文題目: 無線環境におけるインターネットアクセスに関する研究


論文概要

 無線通信技術の発展とインターネットの普及に伴い, 無線ネットワークからのインターネット接続に対する需要が増加している. イ ンターネットでは信頼性プロトコルとしてTCP(Transmission Control Protocol)が多く利用されている. TCPはインターネットの多くを 構成する有線ネットワークの特徴を基に設計されており, 無線ネットワークの特徴は考慮されていない. そのため, 無線ネットワーク ではTCPのスループットは大幅に劣化することが, シミュレーションなどから議論されている.
 一方, TCPのスループットを知るだけではなく, TCPの持つ機構がどのような特性を持つのかを検討するために, 解析的に議論を行う 研究が報告されている. しかし, これらの研究では, TCPの重要な機構である複雑な輻輳ウィンドウ制御が簡単化されていたり, セグメ ントの再送で利用するタイマがタイムアウトするまでのタイマ期間が指数増加する点を考慮していない.
 そこで, 本研究では, 無線ネットワークからインターネットへ接続する場合に, 頻繁に利用されるTCPの特性についての解析モデルを 提案した. 提案した解析モデルでは, 無線ネットワーク特有のセグメント損失の発生に注目することで, 今まで同時に考慮されてこな かったスロースタート, ファーストリトランスミット, ファーストリカバリ, タイマ期間の指数増加を考慮した. また, 無線ネット ワークでのTCPの特性についてTCP Tahoe, TCP Reno, TCP New Renoについて, TCPの再送機構の発生確率, スループット特性を解析的に 示した. また, 解析値の妥当性を検討するために, 既存の研究で多数利用されているネットワークシミュレータnsを利用することで, 提案した解析モデルが極めてシミュレーション値と近い値を示すことも明らかにした.
 TCPの解析の結果, 無線ネットワークでのTCPのスループットは, セグメント損失率の上昇に対して, 急激に劣化することがわかった ため, 無線リンクにおいて誤り訂正機構を適用することを考えた. その際, 本研究では, 一般に多く利用される誤り訂正機構として, FECとしてReed Solomon符号, ARQとしてGo-Back-N方式を適用し, これらの機構によるTCPの特性改善を解析的に検討した. この結果, 無線リンクでの伝送誤りの発生の種類に合わせた誤り訂正機構を適用しなければ, TCPの特性改善は望めないことを示した.
 これらの検討により, 既存の研究では主にシミュレーションなどから議論されてきたTCPの特性を, 既存の解析手法に比べ, 小さい誤 差で解析的に検討することが可能となった. また, 今まで独立なものとして検討が行われてきた, TCPと無線リンクの特性を, 関連する ものとして総合的かつ解析的に検討することが可能となった.


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提出時刻:2001/02/08 18:28:05