氏名: 林 雄一郎 (289934214)

論文題目: 仮想化内視鏡システムにおける自動ナビゲーションと未観察領域提示機能の開発


論文概要

本研究では,仮想化内視鏡システムを用いた診断の際に,ユーザの観察を支援する機能の開発を行った.近年のX線CT像の発達により,医療の場で大量の3次元画像が扱われるようになり,それを読影する医師の負担が増加している.そこで,医師の負担を軽減する診断支援システムの開発が盛んに行われている.その一つとして,本研究室で開発された仮想化内視鏡システム(VES)がある.VESを用いて臓器を観察する場合,ユーザはマウス等を用いてナビゲーション操作を行い,臓器内部を自由に探索する.しかし,形状が複雑な臓器を観察する場合,対象臓器全体を観察するには,ナビゲーション中に視点位置・方向を頻繁に変更する必要があるため,その操作は非常に労力が必要となる.そのため,ユーザが全ての領域を観察することは困難であり,病変部の見落としが起きる可能性がある.そのため,ユーザの労力を軽減し,見落としを減少させるVESの観察支援機能として,自動ナビゲーションと未観察領域提示機能の開発を行った.

[自動ナビゲーション機能] 観察対象の臓器に細線化を施し、臓器の芯線を抽出する.得られた芯線を基に,臓器の中心部を通る経路を生成する.さらに,探索対象とする臓器の形状を考慮した経路の生成を行う.例えば大腸領域の観察経路生成では,ひだ部分の見落としを減らすような観察経路を生成する.気管支領域では気管支枝全てを観察する経路を生成する.本手法を実際のX線CT像から得られた気管支と大腸の領域に対して適用した結果,良好な観察経路が生成されていることを確認した.

[未観察領域提示機能] ユーザがナビゲーション中に観察を行った場所を記録し、ナビゲーション終了後に未観察と推定される領域の提示を行う機能である.ここでは,サーフェスレンダリング画像において画面に表示された三角形パッチ,ボリュームレンダリング画像において積算不透明度から求められる表示画素を,それぞれ求めることでナビゲーション中に画面に表示された領域(既観察領域)と,一度も表示されなかった領域(未観察領域)の特定を行う.本手法を人工図形と,実際のX線CT像から得られた気管支と大腸の領域に対して適用した結果,ユーザは未観察であった領域の確認が可能であった.


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提出時刻:2001/02/08 21:28:48