本論文では、3次元胸部X線CT像からの気管支領域自動抽出法における抽出精度の
改善について検討する。
3次元CT像を利用した診断支援システムにおいて、気管支を正しく抽出することは
重要な課題である。
これまでの自動抽出法の多くは本質的にしきい値処理と同等となる領域拡張処理
によるものであるが、この方法ではパーシャルボリューム効果(partial volume
effect,PVE)の影響により、
特にスライスと平行に走行する気管支枝をうまく抽出できない問題があった。
そこで本研究では、気管支枝ごとに処理領域を区切るために、直方体(ROI)を設定
し、
ROI内で領域拡張を行うことで枝ごとに気管支領域を抽出する。その際、ROIの方向に
応じた鮮鋭化フィルタを施して気管支壁を強調し、PVEを受けた枝の抽出を目指す。
実験では鮮鋭化フィルタとして、8近傍ラプラシアン(2次元,ROIの断面ごとにフィ
ルタリング)
と26近傍ラプラシアンを用い、抽出結果がどのように変化するかを調べた。
その結果、従来法では抽出できなかったPVEを受けた枝を抽出できることが確認され
た。