氏名: 田中友章 (089831128)

論文題目: 胸部X線CT像からのキースライスの情報を利用した肺動脈・肺静脈の分類


論文概要

 本報告では,胸部X線CT像を対象とし,肺動・静脈と気管支との相対的位置関係が 比較的安定したスライス(キー・スライス)上で認識された肺動・静脈から,肺動・静 脈を分類していく手法について述べる.

 肺の腫瘤の良悪性鑑別の際,腫瘤に関係している血管の種類が鑑別の指針となる. このため肺動・静脈が自動認識できれば,有益な診断情報となる.従来,肺門を開始 点とした領域拡張処理を用いて肺動・静脈の分類をおこなった研究が報告されてい る.しかし,肺動脈と肺静脈は互いに接触する個所が存在し,このような場所を介し て誤拡張が起きるため,手作業で分離が必要であった.そこで,本研究では,キー・ スライスの情報を利用することにより,接触部の手作業による分離作業なしで,肺動 ・静脈の分類をおこなう手法について検討した.

 具体的には,2枚のキー・スライス間で3次元的に連続である血管の走行方向を, 各キー・スライス上での対応する中心点を結ぶ線分方向と定め,方向を限定した領域 拡張処理をおこなう.用いる構造要素は,線分方向に中心軸を持つ円柱およびその両 端に半球をつけたもの(カプセル型)であり,この形状の特性から円柱の中心軸方向の みへの領域拡張が実現される.この処理により得られたキー・スライス間での分類結 果から,さらに,肺野辺縁へ分岐していく肺動脈を抽出する.肺動脈の気管支と並走 する性質を利用し,気管支の分岐後の気管支の方向を,それに並走する肺動脈の方向 とし,上記と同様の方向を制限した領域拡張処理により抽出する.

 本手法を胸部X線CT像1例に適用した結果,抽出された肺動脈については,概ね良 好であった.


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提出時刻:2002/02/08 15:01:35