氏名: 田村亮 (089831179)

論文題目: シグモイド関数計算回路


論文概要

シグモイド関数は、ニューラルネットワークの分野で しばしば利用される。そのためニューラルネットワーク専用回路を設計するならば、 シグモイド関数計算の回路化も必要となる。本研究ではシグモイド関数計算回路の、 新しい構成法を提案する。

従来の回路構成法としては、全入力パターンに対してテーブルを用意しておく 方法と、この関数を多項式近似で計算する方法がある。しかし、前者はテーブルの サイズが大きくなり、後者は乗算器や加算器が必要となるため回路面積が大きく なる。ニューラルネットワーク上の個々のニューロンに関数計算回路を搭載するならば、 この回路面積の増大はネットワーク専用回路に深刻な影響を与える。

本研究ではシグモイド関数の計算を、関数の性質 に着目し、テーブル参照、加算、ビットごとの反転により計算する手法を提案する。 この手法は、関数の入力の最下位ビットが1増加したときに、出力の 最下位ビットが最大1ビットしか変化しない性質を利用している。 この性質を用いることにより、入力の上位ビットからテーブルを参照し、 関数の値と、関数の値がどのように変化するか、つまり関数の値の変化パターンを得る。 ここで得られた関数の値は入力の下位ビットを考慮していないため、下位ビットの値に 応じて値の補正を行う。 補正は入力の下位ビットと、関数の値の変化パターンから補正値を計算し、テーブル から得た関数の値との和をとることにより行われる。

この手法を利用することにより、全入力パターンに対してテーブルを用意しておく必要がなくなり、テ ーブルのサイズを小さくすることができる。 この提案手法に基づくシグモイド関数計算回路を設計し評価を行ったところ、 全入力パターンに対してテーブルを用意している回路と比較して、テーブルサイズは約1/3、 回路面積は約4/5になった。遅延は出力補正値を計算するための加算器が必要となるため、 約1/10増加した。また、他の計算法の例として 区分一次近似法を用いた回路との比較を行った。回路面積を比較すると、区分 一次近似法を用いた方が小さかったが遅延が大きく、回路面積と遅延の積は提案手法に基づく計算法 を用いた回路の方が小さく優れていた。

本研究での計算法は、入力の変化に対して出力の 変化のパターンが少ない関数に応用可能であると考えられる。


目次に戻る


提出時刻:2002/02/08 15:51:52