本論文では,前立腺針生検シミュレーションシステムの構築とその評価方法につい て 述べる.
近年我が国において,食生活の西洋化及び高齢化の進展に伴い前立腺 が んが増加傾向にある.このような中で前立腺がん集団検診が盛んに議論されている. PSA染色を用いた前立腺針生検を行う場合,確実にがんの存在診断を行うためには, 組織的かつ数値的に針の本数,配置法,角度などといった穿針法を検討する必要があ る.そこで,本研究では,がん病変を含んだ前立腺摘出標本を3mm間隔でスライス し,撮影した2次元画像を基に3次元再構成した前立腺像に対して,前立腺針生検シ ミュレーションを行う.その結果に基づいて,前立腺針生検時の針の本数及び挿入角 度等と採取される病変組織量及びがんの広がりの推定との関係を調査する.
本 シ ミュレーションシステムを用いて,前立腺摘出標本画像9症例に対して適用し,現在 最も一般的な生検手法とされる3種類の系統的分割生検手法の評価を行い,前立腺針 生検の定量的評価が行えることを示せた.