近年、記憶装置の大容量化やＣＰＵの高速化といった計算機技術の進展に伴って、データサイズや処理速度の問題で利用されていなかった様々な分野でビデオが利用されるようになってきている。こうした背景の下、計算機上で大量のビデオ・データを効率的に管理し効率的に利用可能とするビデオ・データベース・システムへの期待が高まっている。ビデオ・データベース・システムの重要な機能の一つにシーン検索がある。シーンとはビデオ中で意味的なまとまりを持つ時間的な部分区間である。ビデオ中には利用者の視点に基づいて様々な粒度のシーンが存在する。これまでに提案されたシーン検索手法では、検索条件の記述が困難であったり、あらかじめデータベース設計者が規定した単位に基づいてでしか検索できないという欠点がある。
本論文では、状況の概念に基づいてビデオのインデキシングを行い、利用者の要求に応じて検索に用いるインデックスを動的に構成する手法を提案する。これによって効率のよいマッチングと、シーンの粒度に対応した、適切な特徴に基づくシーン検索が可能となる。状況は、ある時点での特定の視点に基づくビデオの内容記述であり、多次元のベクトルとして表現される。シーンは状況の時系列として表現され、検索要求のシーンと類似した系列をデータベース中から検索する。シーンの粒度によって状況の構成を変化させることで、ベクトルの次元数を削減し、かつマッチングの単位となる状況の数も減少させることができる。我々は実際の野球のデータをもとにいくつかの実験を行い、本手法によって適切なシーンが効率良く検索されることを示した。