氏名: 菅原智明 (280034164)

論文題目: 3次元胸部X線CT像における縦隔リンパ節の存在位置の推定と表示の手法に関する研究


論文概要

本論文では、3次元胸部X線CT像における縦隔リンパ節の存在位置の計算機による自動推定と 推定結果の表示手法について述べる。

近年、肺がんの精密な診断は3次元X線CT像で行われている。その精密診断では、縦隔リンパ節に 肺がんが転移しているかを確認する必要がある。 しかし、正常な状態のリンパ節はCT像上に写らず、リンパ節腫となって初めて確認できる場合が多い。 またリンパ節は縦隔内に多数存在する。したがって読影医師が、全てのリンパ節に異状がないことを 確認するには労力を要する。そこで計算機でリンパ節の存在位置を推定し、 その結果を画面上で医師に提示し、診断を支援することが本研究の目的である。

縦隔リンパ節の存在位置は、縦隔内の臓器の位置関係から求めることができる。 そして、その存在位置によってリンパ節番号で区分される。 区分に必要な臓器は (a)左腕頭静脈、(b)奇静脈弓、(c)上大静脈、(d)大動脈弓、(e)上行大動脈、(f)下行大動脈、 (g)気管、(h)主気管支、(i)左主肺動脈、(j)右主肺動脈である。臓器の特定の位置によって、 頭尾方向の区分の境界面となるスライスが決定し、スライス内における各臓器の特定の接線によって、 区分の境界線が決定する。 従来の研究により(c)から(j)は自動抽出されており、これらによって定まる境界面および境界線は 自動決定できる。 (a)(b)は、現在の3次元X線CT像の解像度では自動抽出が困難であるが、これらは頭尾方向の境界面を 決定する臓器であるため、完全な抽出は行わず以下の処理により境界面を決定する。

自動抽出されている臓器画像から (a)(b)の存在する可能性のある領域をそれぞれ決定し、その領域内でしきい値処理および 連結成分の面積計測を行い、最大面積を持つスライスを求める。これらのスライスから (a)(b)によって定まる境界面を決定する。

以上の境界線および境界面によって、 縦隔をリンパ節番号ごとに領域分割し、その結果を縦隔リンパ節の存在位置とする。 結果の表示手法として、存在位置をリンパ節番号ごとに色分けしCT像のスライス上に 重ねて表示する。

本手法を実際の3次元胸部X線CT像に適用し、概ね肺癌取扱い規約に沿った縦隔リンパ節の 存在位置の区分が得られることを 確認した。


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提出時刻:2002/02/07 17:03:01