氏名: 星野好昭 (280034253)

論文題目: 仮想病理標本作成手法における臓器変形手法に関する検討


論文概要

本報告では、内部に広い空洞を持つ臓器(管腔臓器)を計算機上で仮想的 に切り開き、仮想臓器展開像(仮想病理標本)を作成する手法における臓器変 形手法、および仮想病理標本表示方法に関する改善について述べる。3次元CT 像に含まれる臓器を観察する際、臓器の形状をそのままの3次元画像として忠 実に再現し観察を行なう方法がある。しかし、この方法で胃や大腸などの管腔 臓器内壁面全体を観察するためには、何度も視点位置や視線方向の変更が必要 となり非常に手間がかかる。そこで臓器を仮想的に切り開き内部の観察を行な うことができれば、内壁面全体を一度に観察可能であり診断に有効であると考 えられる。また、仮想臓器展開像の作成は、実際に臓器を摘出することなく臓 器の展開が可能であるため、実際の切除標本作成のシミュレーションとしても 有効であると考えられる。 そこで我々の研究室では、3次元CT像を変形することで仮想的に臓器の展開像 を作成する手法の開発を行なってきた。この手法は、臓器の大まかな形状を表 す三角形パッチの集合(展開基準図形)を計算機上で切り開いた図形(展開図 形)を作成し、展開基準図形 と展開図形の対応関係を利用し3次元CT像の変形を行なうことで仮想病理標本を作成する。 しかし、従来手法では切開線を自由に指定できない、展開時にパッチ同士が重なりやすい、パッチがどの程度変形しているかわからないといった臓器変形に関する問題点、および、仮想病理標本と元の臓器形状の対応関係がかわかりにくい、仮想病理標本を一枚の画像としてみた場合、細かなひだは普通の臓器壁面と区別が難しいといった仮想病理標本表示方法に関する問題点があった。そこで本手法では、切開手法の改善、展開時にパッチに加える力の方向の追加、各頂点にかかる力および、パッチの変形の割合の表示を行った。また、展開基準図形と展開図形の対応関係を利用し仮想病理標本と元の3次元形状との対応関係を表示する手法、モルフォロジ演算を利用した仮想病理標本のひだ領域を強調表示する手法を開発した。

本手法を実際の3次元腹部CT像に適用した結果、より術者の任意の位置での仮想切開が可能となり、また、パッチ同士が重なることなく展開が可能となった。さらに、パッチの変形が直感的に表示可能であることを確認した。また、仮想病理標本と元の臓器形状との対応関係の表示が可能となり、ひだ領域を強調表示した場合、細かなひだも臓器壁面と識別可能となることを確認した。


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提出時刻:2002/02/04 21:36:48