近年，地理情報システムは，都市機能の管理・計画，公共施設の運用，そして交通網の整理・運用に基礎的役割を果たし，特に知的交通情報システ
ムの重要な一部として認識されている．しかし，現在ではある地域に特化したり，ある種の応用に特化した試みは実施され，計画されているが，多
種多様な応用に対応可能であり，かつ地図情報の維持管理が容易であるような情報モデルは確立されていない．そこで，我々は上記の問題点を解決
するようなモデルとして，多相ピラミッド形状情報モデルを提案している．
我々の枠組みにおいては，様々なスケールに対応する地図情報内で同一地図情報を重複することなく管理し，また統一的な枠組みの下で，各スケー
ルの地図情報間において情報の伝播を行うことにより，地図情報の維持管理が容易となり，また様々な応用に柔軟に対応することが可能となる．本
論文では，我々の提案する多相ピラミッド形状情報モデルの構造，主な機能である継承機能/汎化機能，及びデータ更新処理について述べる．継承
・汎化機能においては，層間にわたる地図オブジェクト間関係を地図オブジェクトの種別ごとに幾つか定義した．実際の処理時にこれらの関係を利
用することにより，矛盾無く情報伝播を行い，かつモデル全体のデータ一貫性を保証することができる．また，我々が実装した多相ピラミッド形状
情報モデルのプロトタイプシステムを紹介し，モデルの有効性を情報量，検索効率，及び更新効率の点について考察する．