論文題目:Cdomain : 解析性判定機能付き円板演算システム

研究室:杉浦グループ

氏名:加藤 智之

概要:

本論文では,関数の解析性判定機能付き円板演算システム Cdomain を提案する. 複素関数の解析性および解析領域の広さは アルゴリズムの選択や計算結果の精度保証にとって重要な情報である. ある領域で複素関数が解析的であるとは, その領域内のすべての点において関数が微分可能であり, かつ,その導関数が連続であることである. 例えば,ある円板上で関数の解析性と関数値の最大絶対値がわかれば, 円板の中心における Taylor 展開係数の絶対値を評価することが可能になる. これをもとに部分級数の誤差評価など,さまざまな精度保証付き計算が可能となる.

これまで,矩形や円板を基本単位とする区間演算システムが提案されてきた. しかし,これらの演算システムには関数の解析性を判定する能力がない. したがって,利用者自らがプログラム実行前に解析性について考慮する必要がある. 今回,提案する Cdomain を利用することにより, 利用者は関数の解析性をプログラム実行中に検証することができる. これにより, 人間が解析性に関して事前に検討する手間を省くことができるようになった.

Cdomain は原理上,既存の区間演算システムを利用し実装することが可能である. しかし,実装された既存の区間演算システムは精度がよくないため, 今回,基礎となる区間演算システムの実装からはじめた. 実装にあたり,高精度な円板演算を行う直径円板の概念を用いた. Cdomain は,円板と解析性フラグをデータに持つクラスとして実装した. クラスにおいて関数をオーバロードし, 円板演算を行うとともに解析性を判定し, その結果を解析性フラグに収めた.