本論文では，細かい粒度のクロスリファレンス情報を用いる VHDLクロスリファレンスブラウザを提案する． 細粒度のクロスリファレンス情報を得るために，VHDL記述を解析し， VHDL開発の際に用いられるツールのために，細粒度の解析結果を提供する ツール・プラットフォームを作成する．
近年，VLSI回路設計の分野では，ハードウェア記述言語(HDL)を用いて開発するよう になった． その中で代表的な言語にVHDLがある． VHDLを用いた開発では既存のライブラリを利用して，コンポーネント を組み上げて回路を作成する． そこでそのような開発現場では，コンポーネントの階層構造理解のため， Hierarchical Viewerと呼ばれる階層構造表示ツールが用いられる． 一方，functionやprocedureなどのコンポーネントより細粒度の部品化， 再利用を行う場合がある． 既存のHierarchical Viewerは，コンポーネント単位の記述を扱うため， このような作業には適さない． 細粒度でVHDL記述を扱うツールが別に必要となる． また，言語を扱うツールを作成するためには，字句・構文解析器等の基本的な 解析器を個別に作成しなければならない. しかし，その作成には多くの労力がかかる． そのうえ，解析器自体はツールの本質とは関係ないことが多い． そこで，様々なツールに共通して用いられる機能を提供する ツール・プラットフォームが存在すれば，解析器をツールの間で 共有することが可能となる． ツールの開発者の労力を軽減できる．
本論文では，VHDL記述を解析し，解析した構文情報をVHDLツールに提供する VHDLツールプラットフォームを作成した． プラットフォームの提供する機能を用いて，VHDLクロスリファレンスブラウザを 試作することで，VHDLツール作成の労力が軽減されることを示した． また，試作したブラウザは，開発者に細粒度クロスリファレンス情報を提供する ことで，VHDL記述理解支援ツールとして有用であることを示した．