本論文では複眼視ベースの3次元形状復元に不可欠な,複数の視点から撮影 された物体上の点の,画像間での対応づけを高速に行なうための手法と,対応 探索を行なう点の選択法及びこれらを実内視鏡画像に適用した結果について述 べる.  近年,患者に対して低負担であるなどの理由から内視鏡を用いた手術が増加 しており,その際に医師の内視鏡操作を支援することが重要な課題となってい る.そこで我々は内視鏡ナビゲーションシステムの研究を進めている.このシ ステムにおいて,カメラ位置の把握は最も重要な要素の一つであり,我々は複 数画像間の点の対応関係を利用した方法を検討している.気管支内視鏡画像に は追跡に有効な際立った特徴が少ないため,対応点の探索にはテクスチャの考 慮が可能な相関係数などの利用が必要となる.しかし,これを参照画像と調査 点の全ての組合せについて計算することは膨大な計算量につながる.  そこで本論文では主に二つの手法について述べる.1つは対応点追跡高速化 手法であり,もう1つは追跡開始特徴点選択手法である.両手法とも,画像中 から参照画像と類似する部分画像を高速に探索可能な,アクティブ探索法によっ て効率的な探索が可能となっている.画像系列が与えられてから,追跡が行な われるまでの大まかな流れは次のようになる.まず,系列の最初のフレーム (追跡開始フレーム)内から追跡開始特徴点選択手法によって追跡開始特徴点を 選択する.次に対応点追跡高速化手法により対応点を得る.  対応点追跡高速化手法は,対応点候補の絞り込みにより相関係数の計算回数 を削減することで,対応点探索に要する時間を短縮する手法である.まずアク ティブ探索法により,参照画像とのヒストグラム類似度が高い点を対応候補点 とする.得られた候補点に対してのみ相関係数を計算することで全体の計算量 を削減する.追跡開始特徴点選択手法は,対応点追跡高速化手法の追跡成功率 を高めるために,適切な追跡開始点を選択する手法である.対応点追跡高速化 手法の候補点絞り込みにおいて正しい対応点が除外されないよう,追跡開始フ レーム内で他の点との類似度が低い部分画像を追跡開始特徴点とする.単純な 探索では追跡開始フレームの画素数の2乗のオーダの計算量となるため,参照 画像候補毎の探索ではアクティブ探索法を用い,さらに参照画像候補間でも枝 刈りを行なって計算量を削減する.  実内視鏡画像を用いた対応点追跡実験により,対応点追跡の実行時間を17分 の1以下に削減できることを確認した.また追跡開始特徴点選択手法について は,同手法によって選択された特徴点を用いることで追跡成功率が向上するこ とが確認され,有効性が示された.