実用的な公開鍵暗号の大半は、有限体上の乗法群における素因数分解問題および離散対数問題と呼ばれる問題に基づいて構成されている。これら2つの問題に対しては多項式時間のアルゴリズムは発見されていないが、準指数時間のアルゴリズムが存在している。そのため公開鍵暗号は解読に対して安全性を確保するために長大な鍵を必要としていた。
1985年にKoblitzとMillerが示した楕円曲線に基づく公開鍵暗号は、有限体上の乗法群の場合のような準指数時間のアルゴリズムが存在しないために、1/4程度の長さの鍵で同等の安全性を確保する事が可能である。しかし楕円曲線においては点と点の加法と呼ばれる演算が定義されるが、元の有限体における10回程度の乗算を必要とするという問題がある。
本研究では計算機上に楕円曲線に基づく公開鍵暗号システムを実現し、有限体上の乗法群における公開鍵暗号との処理時間の比較を行なう。