吹き付けモデラとは、仮想空間に置いたスプレーから物体表面に粒子を吹き付けるこ とで物体を削ったり盛り上げたりする立体造形システムである．この手法は、サンド ブラストと呼ばれる非触加工法をまねることで、仮想空間にマウスのみで操作できる 手軽でリアルなモデリング環境を実現している．吹き付ける範囲，単位時間当たりの 吹き付け量，粒子の分布を変えることで様々な加工が可能である．また，形状変形が 実時間表示されるため，直感的に造形することができる．
これまでの吹き付けモデラはZ-listという構造を用いて物体の形状を記述していた． Z-listは物体をＺ方向を高さに選んだ正四角柱の集まりとして表現するので，吹き付 け方向をＺ軸に選ぶことで，高速な形状変形が可能である．しかし，吹き付け方向を 変えるたびに形状をサンプリングしなおさなければならないため，量子化誤差により 物体表面に不必要な凹凸が生じる問題があった．
本研究では，Z-list記述とサーフェース記述の長所を融合して，高速かつ回転による 変形を生じない吹き付けモデリングを提案する．具体的には，物体表面をポリゴンで 記述することで，再サンプリングを不要にする．ただし，吹き付けにより変形を受け るポリゴン頂点はZ-listを用いて効率よく検索する．また，加工による物体の貫通も, Z-listを構築する際に表と裏の対応する点を記録しておき,距離を判定する対象を最 小限にしている．これにより，従来のシステムと同等の処理速度を実現する．