人間が行なっている立体視の要素としては、両眼立体視や調節要因・大きさでの判断など、たくさんの要素が挙げられるが、今まで眼球の回転運動による視差(Ocular Parallax)の効果は重要視されてこなかった。
本研究は、眼球の回転視差による奥行き視能力の測定する事を目的とする。そのために、8人の被験者に対して幾つかの心理実験を行ない、総合的な奥行き視能力から他の余分な要素(調節要因・網膜像の大きさによる要因等)を除去し、眼球の回転視差による奥行き視能力を測定した。その心理実験の結果に対してχ2検定を行ったところ、眼球の回転視差による立体視は、他の立体視要素に比べるとその効果は小さく、またその能力に個人差があるものの、奥行き視が出来ると言えるだけの能力がある事が検証された。
以下の表は、それぞれの心理実験において、被験者が正しい答えをした確率である。無条件はその名の通り、特に条件を付けなかったので総合的な奥行き視能力を測っている。ピンホールとは、ピンホール(小さな穴)を通して覗く事で調節要因による奥行き視を除去したものである。太さ変更1とは、測定対象の太さをランダムに変えることで、網膜像の大きさによる奥行き視を狂わせたものである。太さ変更2は、太さをランダムに変更する旨、つまり大きさが奥行き視の参考にならないことを通知した上で行った実験である。
被験者 | A | B | C | D | E | F | G | H |
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無条件 | 85 | 78 | 74 | 81 | 56 | 50 | 65 | 71 |
ピンホール | 72 | 99 | 62 | - | 59 | 59 | 72 | 75 |
太さ変更1 | - | - | - | 55 | 65 | 58 | - | 55 |
太さ変更2 | 64 | - | - | 68 | 69 | 50 | 62 | 56 |