本研究では大動脈の抽出を行う.従来の大動脈抽出手法では,CT像を平滑化し,平滑化された画像に対して球領域拡張に より大動脈領域を抽出していた.しかしこの手法では,他の領域(心臓や肺動・静脈)が抽出されたり,大動脈の一部が欠 如するという問題があった.この問題の解決法の一つとして,従来法で得られる大動脈領域を基に大動脈の形状モデル を作成し,モデルが入力CT像の大動脈に適合するように変形させることで,正確な大動脈領域を抽出する方法を提案す る.大動脈のモデルはB-スプライン曲線で表現された中心線とB-スプライン曲面(大動脈の輪郭)で表現された管からな る.本手法による大動脈領域の抽出手順は,まず,いくつかの症例から手入力で制御点を配置して平均的な中心線を作成 し,得られた中心線を入力CT像の大動脈の中心に適合するように動的輪郭法を用いて変形させ,大動脈の中心線を抽出 する.次に,中心線の周りに中心線に沿ってある間隔でリング状に制御点を配置し,大動脈の輪郭形状をモデル化し,リン グ状に配置した制御点を入力CT像の大動脈の輪郭に適合するように動的輪郭法により変形させて大動脈領域を抽出す る.本手法の一部,大動脈の中心線抽出を実際の3次元胸部X線CT像に適用した結果,良好に大動脈の中心線を抽出できる ことを確認した.