実時間対話処理システムでは, ユーザ発話の音声認識結果 やユーザのキーボード入力・マウス入力などが, 自然言語解析モジュー ルの入力となる. その際, 音声認識モジュールが認識処理の途中でその結果を変更したり, ユーザが入力の途中でその内容を変更したりするなど, 自然言語解析モジュールへの入力が動的に変化する場合がある.
本論文では, 入力文の動的な変化に対応して, 解析結果を随時変更可能な 構文解析手法を提案する. 本手法では, 通常の自然言語の入力に対しては 漸進的構文解析に従って順次解析を行 う. また, 入力文が変更された場合には, 即座にボトムアップ構文 解析に従ってフレーズの解析を行った後, 右から左への方向での漸進的 解析により入力文全体の解析木を作成する. これにより, 変更前の解析結果をできる限り活用 して, 新たな解析木を作成することができ, 効率的な再解析 が可能となる.
本論文ではまた, 本手法 に基づき作成した英日翻訳機能を備えたオンラインキーボード対話 支援システムについて述べる. このシステムは, 一方のユーザによる入力に対して随時その翻訳結果を作成し, それをもう一方のユーザに提示する. 本システムをワークステーション上に 実現し, その実現可能性を確認した.