本研究では，胸部X線CT像からの異常陰影候補領域（Suspicious Region 以 下SRと略す）の抽出を目的とする。なお、用いるCT像は、精密検査で用いら れる再構成間隔が１mmの画像であり、本研究で抽出されたSRを質的診断支援 システムの入力とするため、SRの位置のみではなく細かい形状も抽出する必要 がある。
本手法ではCT像を入力とし、その肺野領域内に対して、CT値に対する２値 化処理により、血管、気管支、ＳＲを抽出する。得られた2値画像に3次元ユ ークリッド距離変換を施す。次に、肺門部付近に存在する太い血管や気管支に よる拾いすぎを抑えるために肺門部からの距離に応じて距離値に対するしきい 値を決定した後、SRを抽出する。
本手法を適用した結果、従来の手法よりもより精細なＳＲの表面形状、位置 の抽出ができた。また、今後の課題として、肺門部の写っていない症例に対処 できる手法、及び、抽出されたSRの表面形状の妥当性の評価が挙げられる。