現在、完全失明の治療法は確立されていない。そこで我々のグループでは視覚神経
系を電気的に刺激することで視覚を回復させる人工眼「ハイブリッド型人工網膜」の
開発を進めている。この人工眼は無線で電力を供給することから、供給電力量が限ら
れる。そのため、神経を効率的に刺激するための電気刺激パターンや電極設計の研究
が必要となる。
そこで本研究では、神経系への効率的な電気刺激に関する知見を得るために動物実
験を行い、その影響の解析を行った。麻酔下の実験動物(猫)の外側膝状体を電気刺激
し、それによって誘発される視覚野の誘発電位を測定した。刺激電流のパルス振幅、
パルス幅、パルス形状、そして電極間距離を様々に変化させた。同様にパルス形状も
シングルパルス、ダブルパルス、バイポーラパルスと変化させ、それに対する影響を
調べた。
実験の結果、次のことがわかった。
1.電極間距離が大きくなると全体的に大きな神経応答が得られる
2.刺激時間が短い方が効率的である
3.バイポーラパルスでは他のパルス刺激より大きな神経応答が得られる
4.100μAの電流パルスでは組織へのダメージは見受けられない