氏名: 北川英志 (d05751)

論文題目: 三次元画像の対話処理と手術シミュレーションシステムの実現に関する研究


論文概要

 近年の医療現場においては,CTやMRIなどの医用三次元画像装置が普及し,人体の 三次元構造の画像化が容易に行えるようになった.一方,近年における計算機能力の 向上に伴い,これらの医用三次元画像の処理,あるいは表示が容易に行える環境が整 いつつある.これらの要因から,医用三次元画像から人体の内部構造を計算機上に再 現し,これに対する手術操作を仮想的に行うことのできる手術シミュレーションシス テムへの注目が高まっている.
 本研究では,近年の計算機技術の二つのパラダイムである分散環境と仮想環境にお ける三次元対象物のインタラクティブ操作および手術シミュレーションシステムにつ いてそれぞれの基本的枠組みを考察し,実際の開発を行った.また,手術シミュレー ションシステムの評価機能に着目し,「リアルタイム距離マップ表示」機能と,「表 面積計測」機能を開発し,考察を加えた.
 分散環境における手術シミュレーションシステムでは,分散環境を利用した画像処 理システムを開発するための開発環境VISUAL(Visual Image processing System Unde r process ALliance)を開発し,これを用いて手術シミュレーションに必要となる仮 想空間操作を行うことのできるシステムを構築した.本システムでは三次元画像に対 する基本対話操作を実現し,さらに複数操作者でこれらの操作を同時に行うための機 構を開発した.仮想環境における手術シミュレーションシステムでは,グラフィック ワークステーションを利用してシステムの構築を行った.本システムでは,対話操作 の高速処理とハードウェアの利用に適したデータ構造,および,ポリゴン生成手法と ,三次元入力デバイスを利用した手術の対話操作を開発した.
 手術シミュレーションシステムの評価機能では,股関節整形手術シミュレーション で従来から利用されていた「距離マップ表示」を改良し,大腿骨骨頭部の移動に伴い 大腿骨表面に示される骨盤からの距離分布を動的に表示する「リアルタイム距離マッ プ表示」機能を開発し,模型データを用いて距離マップの誤差の検討を行った.この 結果,本評価手法の精度が十分であることが確認された.また,大腿骨骨頭部におけ る骨盤との接触領域の面積を求めるための面積計測手法をいくつか考案し,これらの 比較,検討を行った.この結果から,より正確に表面積を計測することのできる手法 が必要であることが確認された.
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