氏名: 小守良雄 (d05752)

論文題目: 確率微分方程式の数値解法に関する研究


論文概要

確率微分方程式(以下 SDE )を解く数値的方法の収束性・安定性に関する研究を行った.
I)数値的な解法を用いる場合に、注意を払うべき事柄として、次の2点を考えた。
1)数値的な解法における擬似乱数の独立性の重要性について。
    擬似乱数の独立性の乱れが、数値解に影響を及ぼす事を、誤差項を数値スキームに依
    存する部分と統計的な部分とに分離する事によって示す。
2)数値解法の安定性について。
    SDE の解析解における平均二乗安定の概念を、数値解法にも適用するのが妥当である
    事を示す。
II)安定性を考慮に入れた数値スキームの構成.
1)半陰的数値スキーム。
    常微分方程式(以下 ODE )に対する半陰的スキームである Rosenbrock-Wanner
   (以下 ROW)スキームを SDE 用に拡張したものを考える。半陰的スキームを選んだの
    は、安定性と計算量の両面で優れているからである。
2)ROW が達成できる安定性について。
    ROW スキームが達成できる安定性には、限界があることを示す。
3)次数拘束条件の導出。
    高精度(weak senseで)の ROW スキームを作る為には、ROW のパラメータ群が、
    高精度を達成する為の制約条件を満たすようにしなければならない。
    SDE の場合、この制約条件の代数的導出は、ODE の場合より一層困難である。そこで、
    rooted tree による解析を SDE の場合に拡張し、この制約条件(次数拘束条件)
    を比較的簡単に求める方法を提案する。
4)次数拘束条件の解。
    2次の ROW スキームに対する次数拘束条件を解いた。この解は自由パラメータを含む
    ので、それを調節することにより、平均二乗安定なROW スキームを構成した.
III)ROW スキームによる数値実験。
    I)の1)で用いたテスト方程式を通じて、ROW スキームが設計された機能をもつこと
    を数値実験によって確認する。そして、偏微分方程式で定式化された問題への応用例
    も示す予定である。

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