氏名: 東海彰吾 (d05753)

論文題目: コンピュータグラフィックスにおける自然物および自然現象の表現に関する研究


論文概要

コンピュータグラフィックス(以下,CG)において,自然物や自然現象を扱うことが 注目されている.本研究では,従来報告されていなかった自然物の表現手法の開発お よび自然現象を可視化し対話的に現象を観察するシステムの開発を行った. 自然物の表現では,外観の重要な特徴である表面の凹凸テクスチャを扱い,基本的な テクスチャ生成手順は,まず,平面上の格子点上に基準点を配置し,次に,基準点を 乱数を用い平面上で移動し,さらに,基準点をもとに対象の特徴を反映した図形を発 生し凹凸テクスチャとするものである.また,この処理に中点変位法による揺らぎを 付加し,規則性と不規則性を合わせ持つテクスチャが生成される.これを具体的な対 象として爬虫類皮革と柑橘果実に適用した.まず,ウロコの並びが特徴である爬虫類 皮革に対しては,図形発生においてボロノイ分割と,自由曲線によるウロコの断面形 状を用いてテクスチャを生成する.これにより実物の持つ特徴を表現可能なテクスチ ャが得られた.さらに,皮革製品形状に張り付けて表示することにより,皮革製品デ ザインなどへの応用の可能性を示した.また,小さなくぼみで覆われている柑橘果実 に対しては,2次元の確率密度関数によるくぼみ形状を平面上に分布してテクスチャ 生成を行う.幾つかのパラメータによりテクスチャの性質を制御でき,みかん,オレ ンジ,レモンの表面特徴の違いを表現した.さらに,みかんについては農芸の分野で 報告された色変化モデルとフラクタルによる色変化の時間差を導入し,色むらを持つ 現実に近い色表現を行った. 一方,CGの応用分野である科学的可視化において自然現象を扱うことが注目され,観 察者の望む自由な観点からの現象観察や,インターネット等から得られる現象に関す る部分的な情報の総合的な映像化が望まれてきた.本研究では自然現象を様々な情報 源からの情報に基づきCG映像として可視化し,マウス等を用いて対話的に観察可能な インタラクティブ可視化システムの開発を行った.これは,各種データの導入・統合 機能,CGアニメーション生成機能,インタラクティブ操作機能の3つの基本的な機能 を持つ.これらが連係して動作して対話的な操作で視点変更などを行いながら現象観 察ができ,また,最新情報を導入したCG映像を短時間で生成できる.さらに,実際の 天文現象に適用し,現象を可視化するCG映像を製作した.この映像はインターネット などで公開され,天文の教育普及にも有用な成果となった.
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