氏名: 目加田慶人 (d05754)

論文題目: 線図形解析のための特徴量とそのX線像計算機診断への応用


論文概要

 本論文は,2次元および3次元の線図形に対して,その“局所集中”を定量化する特徴量を利用した2種類の異なる診断支援システムに関する研究である.以下にそれらの概要を述べる.
(1) 胃X線二重造影像を対象とした診断支援システム
 胃X線二重造影像は胃がんの早期発見に重要な役割を果たした.しかしながら,診断には数枚読影する必要があり,画像診断における精度管理や,医師の労力削減のための診断支援システムの構築が望まれている.
 本論文の2章では,ひだ集中の定量化において最も重要となる特徴量である2次元の「集中度」の基本的な性質の解析を行う.さらに,集中の方向に関する一様性を評価するための尺度として,「一様指数」を提案した.これらによって,胃がんによるひだ集中をより正確に評価することが可能となり,集中度を単独で用いる場合に比べて多くの病変候補領域の拾いすぎが削減されることが知られた.
 また,3章では胃がん診断に重要な情報をもたらす,胃内壁ひだを正確に抽出するための非線形フィルタを提案した.このフィルタの出力結果に対して,2章で定義された特徴量などを用いて構築した,病変部検出システムに70例以上の胃がん症例を適用した結果,総合的な病変部検出能力の大幅な上昇が認められた.
(2) 胸部X線CT像を対象とした診断支援システム
 本研究は,医師が腫瘤陰影の良性度・悪性度の鑑別の際に活用する規準の定量化(知識の獲得)を目指すものである.
 肺腫瘤影の良悪性鑑別は,手術が可能か否かなどの患者の予後に大きくかかわる重要な判断を与える.肺腫瘤影の中で,特に肺野末梢に発生する腺がんの多くは,病勢の進行に伴って周囲の組織を引き込む現象(集束)が多く見られる.この集束の定量化のために,これまで2次元線図形のみで考えられてきた集中度の3次元への拡張を行った.実際に胸部X線CT像に対して,腫瘤に対する周辺組織の集束を3次元集中度で定量化したところ,医師の目視による集束の程度と3次元集中度の値に明らかな対応関係が認められた.
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