氏名: 高田 修 (d06726)
論文題目: 知識処理に基づいた2次元メッシュシステムの鍛造変形解析への応用に関する研究
論文概要
我々は知識処理の手法を用いて,鍛造変形解析や流体解析など様々な計算力学
の分野に適用できる構造格子による汎用的な2次元メッシュ生成システム
GENMAI(Artificiail Intellingence Mesh GENerator)を開発し,実際の鍛造変
形解析の再要素分割(変形の度合に応じて,メッシュを作り直すこと.)
にGENMAIを適用した.
その結果,一連の鍛造変形解析作業の自動化が可能となり,解析などに関する
ノウハウを持たない設計者でも適切な解析結果を短期間に得ることできるよう
になった.
メッシュ生成は計算力学の分野で重要なタスクの一つであり,メッシュの質の
良否が計算精度や計算時間に大きく影響を及ぼす.
適切なメッシュを生成するためには,解析対象,解析分野,計算手法などに関
するノウハウを多く必要とするため,知識処理によるアプローチが有効である.
我々は,鍛造変形解析,計算流体力学の専門家のメッシュ生成過程を分析・モ
デル化し,その実現手法である推論方式,探索手法を考案した.
本報告では,研究の背景・システムのねらい,従来手法との比較についてまず
述べる.次に,システムのモデル化について概説し,その実現手法の中で今回
提案した探索手法および推論方法について詳しく説明する.さらに,本システ
ムを実際の鍛造変形解析の問題に適用した結果について述べる.
GENMAI の特徴は以下の通りである.
- 大域的な依存関係と局所的な依存関係を組み合わせた探索手法により同
時に複数のメッシュパターンを効率よく求めることができる.
- 分野に依存しない標準的な手順(メタ・ルール)と分野固有の知識(ルー
ル)を分離し,メタ推論を用いることにより,異なる分野への適用が容易であ
る.
- 複数の競合解消戦略を組み合わせた推論方式を用いることにより複雑な
処理の流れを的確に表現できる.
また,鍛造変形解析に適用し,以下の効果が上がった.
- 従来解析経験のある設計者でも0.5日から1日かかっていたメッシュ生
成を約10分に短縮することができた.
- 経験の浅いユーザでも専門家と同等に精度の良い解析結果を得ることが
できるようになった.特に解析経験の浅い設計者は,複雑な形状などに対して
適切なメッシュを生成することができなかったため解析をあきらめる場合があっ
た.
- 従来自動再要素機能がなかったため一部の部品に対してのみ鍛造変形解
析を行っていた.しかし,本システムの利用により,軸対称問題および平面ひ
ずみ問題に関し全ての部品に対応できるようになった.
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