氏名: 水野 慎士 (d953405)

論文題目: 仮想空間での対話的操作による仮想物体のデザインおよび画像生成に関する研究


論文概要

現実世界における操作をCG技術を駆使して計算機上で仮想体験する研究もいろいろ行 われているが,その中でも重要な問題の一つとして,任意形状物体を対話的に生成す ることがあげられる.本稿では,その具体例として,仮想空間内で彫刻操作によって 立体形状を生成する仮想彫刻と,仮想彫刻によって作成された版木に基づいて版画画 像を合成する仮想版画の2つのサブシステムで構成されるデザインシステムについて 述べる. 仮想彫刻システムは,実際に彫刻するような感覚で立体形状を作成するシステムであ り,対話的操作可能なソリッドモデラである.作成物体はCSG表現で記述されるが, 論理演算の評価による画像生成は描画に時間がかかるため対話的操作に適さない.そ のため,本システムでは交点リストを用意し,この並べ替えによって彫刻操作や視点 変更の際の描画を行う. 操作はマウスによって行い, マウスカーソルを表示された 作成物体上に持っていきドラッグすることで,仮想彫刻刀の位置や方向が決定し,瞬 時に切削や付加が行われる.よって,実際に木を削って彫刻を行うような感覚で仮想 空間内の物体の形状作成ができる. 仮想彫刻では,彫刻素材として任意の形状を用いることができるが,特に平板を用い た場合は版木を作成することができる.版木作成は,前述したようなユーザのマウス 操作による作成のほか,濃淡画像または三次元形状モデルを,それぞれシステムの画 像特徴抽出モジュールおよび三次元形状解釈モジュールに与えることにより,自動的 に作成することもできる. 作成した仮想版木を次に述べる仮想版画システムで用い ることで版画画像の合成を行う. 仮想版画システムは,実際の木版画と同様に,仮想空間内に用意した版木,紙,ばれ んに基づいて版画画像を合成するシステムである.仮想紙は二次元格子で構成され, 初期状態は仮想空間内で版木に平行に置かれる.各格子点は仮想ばれんの操作によっ て版木に少しずつ接近する.版画画像の各画素は仮想紙の格子点に対応するが,画素 の黒色濃度値は格子点と版木との距離によって決定し,距離が小さいほど黒色濃度値 は大きくなる.以上のような,用いる版木の表面形状,紙の変形,作成過程により, 実際の木版画に近い版画画像をコンピュータで合成することが可能である. 本稿では仮想空間操作によって物体生成を行うシステムの実現例として,三次元形状 を対話的に作成する仮想彫刻システム,および仮想彫刻により作成した仮想版木に基 づく仮想版画合成システムについて述べた.これらは,現実世界での彫刻や版画の作 成法を仮想空間内に再現しており,その作成形状や合成画像も現実世界に近いものと なった.今後の課題としては,ユーザインタフェースの改善等,システムの総合的な 性能の向上が挙げられる.
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