氏名: 宋在旭 (4896340036)

論文題目: 画像認識とその胸部X線像診断支援システムへの応用に関する研究


論文概要

 X線像を対象とした計算機支援診断(Computer Aided Diagnosis of X-ray images) は,デジタル画像処理技術の代表的な応用分野として最も早くから注目され,すでに 60年代中頃から後半にわたって,胸部X線正面像から特徴抽出を行ったり,空間周波 数処理や階調処理による画質改善などを行った研究が見られた.それ以後は,肺,乳 房,および,胃のX線像を対象として,肺がん,じん肺,乳がん,胃がんなどの様々 な異常陰影の診断を目的としたCADXの研究が数多く行われ,現在に至るまで,それら のシステムの改良やその他の臓器を対象とした様々なシステムの開発が行われてきた.  本研究は,直接撮影胸部X線像から肺の重要な疾患の一つである肺気腫の病勢進行 度を定量評価する診断支援システムに関するものである.その内容は,大まかには2 つに分けることができ,一つは,直接撮影胸部X線像から末梢血管影を自動抽出する 手順に関する研究,もう一つは,その手順によって抽出された血管影に対して幾つか の特徴量を測定し,それらに基づいて肺気腫の病勢進行度を定量評価する研究である.  まず,胸部X線像からの血管影抽出については,Deformable modelを用いて胸部X線 像からSN比の低い末梢血管影を自動抽出する手順を提案した.具体的には,血管影の 様な樹状構造の図形の記述に適したモデルを示し,それを画像中の適当な位置に配置 した後に血管影の形態的特徴を考慮した変形処理を行って目的の血管影を自動抽出す る.また,様々な太さの血管影に対応するために,スケールスペース処理を導入した .さらに,擬似血管影と乱数を用いて作成した人工画像,および,SN比が非常に低く ,様々な太さの血管影が混在する実際の胸部X線像に提案手法を適用し,その実験結 果から本手法の有効性を確認した.本研究で提案した血管影の自動抽出方法は,対象 図形に関する知識として樹状パターンであるということ以外には特には用いていない ため,他の画像上の同様のパターンの抽出,特にSN比の低い条件で抽出精度が要求さ れる処理への応用が期待される.  次に,肺気腫の病勢進行度を定量評価については,抽出された血管影に対して幾つ かの特徴量を求め,それらを組み合わせて進行度を定量評価する手順を提案した.具 体的には,本手法で用いた血管影に関する3つの特徴量について,医師と計算機の評 価値の間の比較を行い,それらの有効性について検討した.その後,3つの特徴量か ら導出した病勢進行度に関する評価値を求め,医師の評価値との統計的な相関関係を 調べた.その結果,本手法による評価値と医師の評価値との間には強い相関があるこ とが知られ,直接撮影胸部X線像からの病勢進行度の定量評価に本手法が有効である ことを確認した.


目次に戻る


asakura@nuie.nagoya-u.ac.jp