氏名: 松原 茂樹 (m05777)
論文題目: 談話の漸進的解釈に関する基礎的研究
論文概要
人間の言語理解における漸進性は心理学の分野で広く認識されてお
り, この観点から言語理解をモデル化することは有意義である. こ
れまでに, 漸進的解釈に関して, いくつかの研究があるものの, そ
れらの解釈の対象は名詞句あるいは単文に限られている. しかし,
漸進的解釈の重要性は談話理解においてより顕著に現れるため、漸
進的に談話を解釈する枠組が求められる. 本論文では, 動的意味論
を用いた漸進的談話解釈モデルについて述べる. 本モデルにおいて
中心となるアイデアは次の2点にまとめられる.
(1)情報の部分性を表現するために, 状態を状況の集合とする.
(2)語に動的意味論を与え, 語の解釈による状態遷移を規定する.
すなわち, 談話を語の連鎖と捉え, 談話理解過程を語の動的解釈過
程と見なす. 本モデルによれば, 談話における量化のスコープの曖
昧性を解消可能である。本論文では, まず, 漸進的解釈モデルを談
話に適用し, モデルの妥当性を示す. また、本モデルにおけるアイ
デアを談話表示理論に適用し, 漸進的談話表示理論を構成する. 構
成した理論を用いて中断を含む対話理解をモデル化する.最後に, 漸
進的解釈に関する関連研究との比較検討をおこなう.
目次に戻る