氏名: 脇本 亮 (m06756)

論文題目: ファジー・オブジェクト指向データベースにおける否定表現に関する研究


論文概要

オブジェクト指向データベースは、クラス階層を持っている。これによっ てデータの整理が楽になり、また、上位クラスから下位クラスへのデータ の継承は、物理的な節約になるとい う利点がある。このように、オブジェクト指向データベースは注目されて いるデータベースであるが、 関係データベースにおける関係代数のような形式的な枠組が確 立していない。 データベースに蓄えたいデータは常に確かなものであるとは限らない。例 えば、測定によって得られたデータや、予想して与えるデータなどである。 しかし、それらのデータは完全には確かでなくとも、いくらかの信頼度で 確かであるといえるだろう。利用者がデータベースの中にある、ある程度 信頼のおけるデータを利用して結果を得ることが可能になれば、そのよう な不確かなデータも有効に活用することができる。 よって、不確かなデータを扱 うデータベースは有用である。現在、データベース上で不確かな情報を扱 うためのモデルがいくつか提案されているが、オブジェクト指向データベー ス上で不確かなデータを扱う有効なモデルは存在しない。 本研究の目的はオブジェクト指向データベース上で不確かなデータを扱う ために ファジー論理を導入し、データの信頼度、データベースの信頼度を利用者 が与えることが可能なデータベースのモデルを考案することである。 我々の提案するモデルではデータベー スを論理式の集合とみなし、それに形式意味論を与える。その形式意味論 に基づき、与えられたデータの信頼度を基にそのデータから推論できる結 果の信頼度を計算する手続きを提案している。 データベース上で扱われる一般的な否定表現は、negation as failureと呼 ばれるもので、例えば、ある検索を行なって成功しなかった時に『否定』 が成立するとみなされる。 すなわち、『否定』は『肯定』の推論に失敗したこ とにより表現され、間 接的にしか表現されない。よって、これは利用者が期待している 直観的な結果と一致しないことがあり得る。 我々の提案するモデルでは、データベースのファジー化によって真偽値と して段階的な値を持つことができ、 任意の概念の否定を段階的に表 現することができる。従って、 利用者の否定の入った質問式に対して、直観的に期待 している結果により近い答を返すことができる。以上のことをいくつかの 例を見ながら評価する。
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