氏名: 王 莉 (m953439)

論文題目: 地図認識処理における並列化の研究


論文概要

近年、画像認識処理の高速化と認識率向上に対する要求が高まっている。特に 画像処理における問題の多くは、本質的に大きな並列性が含まれているため、 並列画像処理に関して研究されてきた。並列画像処理の研究分野において は、画像処理向けの並列計算機ハードウェアや、画像処理のための様々な並列 処理プログラミング言語の設計・開発の他に、従来の逐次型の画像処理プログ ラムの並列化の研究も少なくない。しかし、従来の画像処理の並列化に関する 研究では、二値化処理や細線化処理などの低レベルの画像処理における並列化 に留まっており、記号レベルでの推論・認識処理などを含んだ高レベルの画像 認識処理の並列化についての研究はあまりなされていない。また、適用される 並列化の手法もデータ分散手法に基づいた単純な並列処理がほとんどであり、複 数の異なる処理を同時に実行する機能分散に基づいた並列処理や、データ分散 手法と機能分散手法を組み合わせた並列処理に関する研究はあまり行われてい ない。効率のよい並列画像認識処理を達成するためには、低レベルの画像処理 から高レベルの認識処理までの様々な処理に対して、データ分散処理と機能分 散処理を組み合わせた並列処理が必要となる。 本研究では、地図画像認識処理を対象として、上で述べた並列化の枠組みにつ いて述べる。本研究では協調的な問題解決の研究において導入された黒板モデ ルに基づいた並列化を提案する。地図画像中の道路情報を表す道路ネットワー クの構築システムにおいて、黒板モデルは基本的な処理パラダイムとして利用 されている。並列地図認識システムは4つの部分からなる。すなわち、黒板、 黒板モニタ、活動生成器とプロセッサ・コントローラである。黒板は原画像、 中間データ及び処理結果を階層的に記憶する。黒板モニタは黒板に格納された 情報の変化を監視し、変化状態を活動生成器に通知する。活動生成器はその情 報に基づいて、並列実行可能な活動を生成する。この活動が並列計算機上で独 立に実行されることにより、並列処理が達成される。プロセッサ・コントロー ラは並列計算機内のプロセッサを管理し、負荷分散を施し、活動を効率よく実 行させる。このシステムでは活動が随時生成され、プロセッサ・ コントロー ラによって割り当てられたプロセッサで実行される。したがって、データ分散 だけでなく、機能分散も含む並列手法によって並列地図画像処理が達成される。 本システムは富士通の並列計算機AP1000上に実装された。本論文では、実装に おける工夫と実験した結果についても報告する。
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