氏名: インドラ マレラ (289634091)
論文題目: 線形系に対するクリロフ部分空間反復解法とその高速化
論文概要
大規模疎行列$A$を係数とする線形方程式 $Ax=b$の解法としては、
共役勾配原理によるCG法・Bi-CG法、最小残差の原理による
MR法・MRTR法、これらを組み合わせたBi-CGSTAB法・
GPBi-CG法(積型反復解法)
というクリロフ部分空間の反復解法がよく適している。
これらの反復解法では、初期値$x_0$と残差$r_0=b-Ax_0$を与え、
逐次的に解 $x_k$ と 残差 $r_k$ を求めていく。
CG法とBi-CG法では残差ベクトル $r_k$ の直交性によって、
解法のパラメータを導入し、反復する。
MR法とMRTR法では残差ベクトル $r_k$ を最小化するように、
解法のパラメータを決める。
積型反復解法は前者と後者の組合せによる解法である。
クリロフ部分空間反復解法の
残差ベクトルは、行列多項式と初期残差ベクトルの積で表すことができて、
この多項式が反復解法を高速化するための決め手になる。
反復解法の高速化には、反復回数や計算量を少なくするかが課題であるが、
反復回数と計算量はトレード・オフの関係であり、
反復回数を減らすには計算量の増加が避けられない。
本論文では、高速化のためにMR法やMRTR法を拡張し、
MR(m)法やMRTR(m)法を提案する。
MR法の残差多項式の二項関係に着目し、収束する場合には隣合う多項式の
比率は必ず$1$より小さいので、これをさらに$m$乗することによって減少率
を拡大する。これをMR(m)法とする。MRTR(m)もMRTR法に対して同様な
考え方で構成する。
非対称Toeplitz行列をもつ問題ではMR(m)、MRTR(m)とも効果が発揮するが、
一般の非対称行列の例題ではMRTR(m)は加速の効果を示さないことが観察された。
この相違を解明することが課題である。
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