氏名: 常 継紅 (289634288)

論文題目: Enclosing the Solution of Initial Value Problems in ODEs Using Interval Arithmetic (区間演算を用いた常微分方程式初期値問題の包含的数値解法)


論文概要

常微分方程式の初期値問題の数値解法として、Runge-Kutta法、multi-step法などの離散変数法がよく知られている、これらの方法の実用版は事後誤差推定公式を内装し、数値解の精度をおおよそ見積もることができる。しかしこの誤差評価は、あくまで推定であり、厳密な誤差の限界を与えるものではない。本論文では、常微分方程式の初期値問題に対して、数値解とその厳密な誤差限界を与える方法について研究した。
Lohnerは、1987年に任意のone-step法について、その数値解の誤差限界をあたえる一般的な理論を提案した。その実現には、用いるone-step法の局所打ち切り誤差の具体的な表現が必要である。彼は、one-step法として、局所打ち切り誤差公式が簡単に得られるTaylor展開法を用いて、具体的なアルゴリズムを構成した。本研究では、LohnerのアルゴリズムをC++上の区間演算パッケージCーXSCにより実現し、その改良を行なった。
第一の改良点は局所打ち切り誤差評価の精密化である。Lohnerによれば、あるステップにおける局所打ち切り誤差評価は、Euler法による粗い評価を用いてTaylor展開法の誤差の上界を求めることで得られる。得られたより精密な評価を再度用いればさらに精密な誤差評価を得る。我々はこの操作を繰り返すことよりLohnerの局所打ち切り誤差評価を精密化した。第二の改良点は伝播誤差の拡大率を小さくすることである。区間算法ではあるステップの誤差の領域は多次元直方体で表される。Lohnerのアルゴリズムでは誤差領域はAffin変換されつぎのステップに伝播する。伝播した領域を多次元直方体で評価すると一般的には過大評価となる。これを'wrapping effect'という。我々は'wrapping effect'を軽減するために区間版 Householder QR分解法による変数変換法を考案した。


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