当研究室で開発された間接撮影胸部Ｘ線像上の肺がんの検出を行う 計算機スクリーニングシステムAISCR-V3は、近年の管電圧の変化によりその性能が低下することが知られ、 これまでにシステムの各部において様々な改良、新しい手順の開発を行なってきた。 具体的には、Deformable modelを用いた肺野領域の抽出、 回転型差分フィルタによる異常陰影の候補領域(Suspicious Region : SR)の抽出、 SRに関するさまざまな特徴量を用いた分類手順などであり、実際の画像を用いた評価では、 いずれも個別には従来より高い精度の結果が得られることが確認されていた。 しかし、これまでには全体を通して一つのシステムとして動作していなかった。
本研究ではまず、今までに改良・開発を行ってきた各処理が、 一つのシステムとして動作するように統合を行った。 また、このシステムを実際に医師が臨床の場で利用することを想定し、 マウスなどによる直観的な操作が可能なユーザインタフェースをGUI(Graphical User Interface)を ベースとして開発した。さらに、画像処理の専門家が大量の画像を用いてシステムの評価や改善を行う際に、 それらができるだけ容易に行えることを目的として、例えば、 処理パラメータのマウスなどによる直観的な変更が可能なインタフェース、 最終処理結果の定量評価の為のROC(Receiver Operating Characteristic)曲線の表示、 などをGUIを利用して開発した。また、このシステムを実際に利用して操作の容易さなどを評価し、 有効性について検討した。