本論文では、肺野形状に関する知識と形状モデルを利用した3次元胸部X線CT像 からの肺野領域抽出法について述べる。3次元CT像はスライスと呼ばれる2次元 画像の組から成り、その撮影枚数は患者一人あたり数十枚〜百数十枚にものぼ り、読影医師の負担が急増している。このため、計算機による3次元CT像診断 支援システムの開発が期待されている。 胸部CT像の診断支援システムでは、肺野内部を対象として肺がんなどの検出 を行なうため、肺野領域はできるだけ正確に抽出する必要がある。しかし、従 来の肺野領域抽出法では、病変が胸壁および縦隔に接触して存在する場合、そ れが原因で、抽出される肺野領域に欠損を生じるという問題があった。このよ うな問題に対処するため、これまでに形状モデルを用いた肺野領域抽出法を開 発してきたが、従来の形状モデルでは個人差の大きい心臓部の抽出精度は低かっ た。そこで、今回は形状の個人差を考慮したモデルを作成し、それを個々の入 力画像に適合するように変形させて肺野領域を抽出する。 本手法を実際の3次元胸部X線CT像に適用した結果、上記のような病変部、お よび、心臓部の抽出精度向上を確認した。