氏名: 沈 俊輔 (28973421-5)

論文題目: 多視点で得られた3次元構造の融合による復元精度の向上


論文概要


画像からいろいろな情報を用い、3次元形状や運動の復元はコンピュータビジョンの重要な課題として多くの研究が行なわれてきた。 この研究が完成できれば3次元モデリング、物体抽出追跡、ロボットビジョンなど、多数の分野に応用可能である。 したがって、本研究では、オプティカルフローを利用し、透視投影像を使い、透視投影像のオプティカルフローから運動パラメータと対象の構造を復元し、復元した構造の融合について研究した。 本研究では多視点での剛体的な運動をする特徴点から透視投影で得られたオプティカルフローを使って、運動パラメータと構造を復元する方法と、得られた構造の融合方法とを提案し、その精度の向上を目標としている。

3次元構造の復元方法は、まず、問題を簡単にし、よい見通しを得るために単位球面状の投影面を持つカメラモデルを採用した。観察を行なう瞬間にワールド座標系とカメラ座標系を一致させ、カメラを瞬間的に動かすと、オプティカルフローが観測され、並進速度と、角速度の2つ要素に分けられる。それで、観測されたオプティカルフローと画像座標を用い、カメラの動きと構造を復元する。本手法は線形な方程式を導き、解く。 必要となる計算は、n*9の行列の零空間の基底ベクトルを見つけること(nは指定した点の数)と、3未知数の6元線形方程式の最小2乗解を見つけることだけである。

視点を変えながら同一構造の3次元形状を復元し、その形状の融合方法を3つ考案した。 構造を融合するためには、各構造間の座標系が異なるため、スケールファクターと回転行列および並進ベクトルを最小2乗の意味で見つける必要がある。本研究では最急降下法を使用した。 求めたファクターを用い、座標系のマッチングが可能になり、融合することができる。

融合の方法としては、単純平均法、重み付き平均法、総加重結果平均法の3つである。 単純平均法とは、第1時点から第N時点に移動しながら求めたすべての構造を第1時点の構造の座標系に合わせ、復元された順序にしたがい、平均を取る方法である。すると、ノイズの平均化により、純ノイズの成分は減少すると言える。 重み付き平均法とは、第1構造に第2構造の座標系を合わせ、平均をとり、その平均に第3構造の座標系を合わせ、前の平均に重みを付けて第3構造との平均をとる。 また、その平均に第4構造の座標系を合わせ、前の平均に重みを付けて、第4構造との平均をとるという方法を使って、融合していく方法である。すると、単純平均法は誤差が大きいと思われる第1構造に座標系を合わせるために、誤差が大きいが、重み付き平均法は融合して行きながらノイズの平均化が行なわれ、ノイズの減少した新しい構造に融合の座標系を合わせるので、より誤差のすくない構造が求められる。 総加重結果平均法とは、単純平均法とか重み付き平均法を使い、融合する際、融合の出発点を各々の復元した構造に対して行ない、最後の融合の結果を求める。N個の構造を融合すると、最後の結果はN個求められる。 それらの融合結果を、また、単純平均法とか重み付き平均法を使い、融合すると、低誤差レベルの融合が可能であり、誤差の減少ができる。

単純平均法は、仮想空間での実験は72.2%、実画像は33.6%の誤差の減少を確認し、重み付き平均法を使った融合は、 仮想空間での実験は73%、実画像は43%の誤差の減少が確認された。 総加重結果平均法はもうすでに融合により安定した構造ができているために、重み付き平均法より、0.73%の誤差が減少した。


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