技術論文などの文書は、流動的ではあるが、ある種の決まった論理展開を持っている。 このような文書のことを半定型性文書と呼ぶ。 定型性を持たない文書の場合と異なり、 半定型性文書では、その論理展開を利用することで文書作成が容易になる。 本研究では、半定型性文書を対象にした文書作成支援システムについて述べる。
半定型性文書を対象にした文書作成支援システムに関して、 岩田(1998)が文章構造記述言語TSML(Text Structure Markup Language)を提案している。 これは、文が文章中で果たす役割や前後の文との接続関係を、 各文に付加するマークアップ方式で記述することにより、文章構造を明確にするものである。 岩田は、この言語で記述された文章のデータから、 接続表現の追加や語尾調節をすることによって、 首尾整った文章を生成するシステム(TSMLブラウザ)を作成している。
しかし、岩田の提案したTSMLでは、 文章の論理展開を示す各役割の順序に対する制約や 新な論理展開に対する拡張について明示されていなかった。 また、作成したTSMLブラウザは、TSML解釈のルールが解釈エンジンと 一体化されて設計されていたので、接続表現の追加・拡張が困難であった。 こういったことから、岩田のシステムは、生成した文章が単調になりがちで、 柔軟性にかけるものであった。
そこで、本稿では、「スタイル」という概念を導入することにより、 論理展開に制約と拡張の方法を与えるTSMLの拡張を行う。 また、TSML解釈ルールをシステムから独立させることで、 接続表現の定義・追加を容易にする。 そして、このような「スタイル」を複数用意し、 必要に応じてそれらを取り替えることにより 柔軟な文章が作成できる文書作成支援システムTSMLエディタを開発する。