視覚による動作識別は人間の持つ優れた機能の一つであり,これにより種々の 複雑な運動,例えば,踊り,体操の動きや手話などが認識できる.この機能の工学的な実 現は興味深い課題の一つであり,マンマシンインターフェイス,セキュリティなど への応用が考えられる.本研究では,関節物体である手の動きに注目し,この動作 の識別問題を扱う.
一般に,物体の動きを解析・識別するためには,画像から特徴を抽出して行わね ばならない. 従来の方法には,画像の時空間エッジ特徴や隠れマルコフモデルを用いるものがある. 本研究では,各種の動作は異なった運動パラメータ値によって特徴づけられるものと考えて, 特徴として対象の運動パラメータ,すなわち並進速度と回転速度を用いる. このアプローチでは,背景や位置に対する制限は必要ではない. また,動作の解析と理解がしやすいという利点がある.
我々は単一の固定カメラから撮った濃淡画像系列を扱う. また,手腕の各パーツが剛体運動をしていると見なす. 中心射影モデルにおいて, 幾何的情報とノーマルフローの拘束とから, 対象の運動パラメータ(未知数6)に関する一つの線形方程式が導かれる. つまり,運動パラメータの推定は,線形方程式を解くことによって決定できる.
処理として,まず平滑化した画像から, 時空間差分をとり,動いている手腕のエッジを抽出する. 次いで,エッジ線分を手腕の各パーツに分けるセグメンテーションを行う. これは線分の長さ,位置と方位によって決める. 抽出したパーツごとのエッジ点において,時空間勾配情報と位置座標値を用いて, 線形方程式を連立して解くことにより,運動パラメータを求める.
得られた運動パラメータ値の時系列を用いて,DPマッチング法であらかじめ用意 した標準パターンと比較し,動きの識別を行う. 実験ではビデオレートで撮った実画像を用いて行い,良い結果を得ることができた.