近年インターネットの普及に伴い，コンピュータを利用した協調学習が注目されてい る．協調学習とは複数の学習者が意見を交換し，協力し合いながら解を導出するとい う学習形態であり，正解を導出するために様々な導出過程を議論しあいながら自ら正 解の導出過程を生成していく能力である創発力を養成可能とする．しかし，インター ネット上では学習参加者の能力によってはいつでも創発力が養われるような効果的な 学習が行われるとは限らない．そこで，我々は学習者間の議論の内容を把握して学習 状況を同定し，正解が導出されない状況や導出過程に対して十分に議論がなされない 状況に対して助言を与えることで，協調学習が効果的に進行するように支援するシス テムの構築を目指す．
本論文では，学習状況を把握するために解導出シナリオと議論評価マップを用いた二 つの視点から学習グループの学習状況モデルを提案する．解導出シナリオは時間経過 に従った正解の導出過程を表現したものであり，解導出シナリオ上で議論の個所や学 習グループの理解状態を特定することにより，正解を導出するという側面の学習活動 を支援する．また，導出された解法に対する他の解法の類似度を評価する議論評価 マップによって，様々な解法に対して議論が十分になされたかを判断する．これら二 つの機構で学習状況をモデル化し，必要時に学習グループに対して助言することによ り，どのような学習グループに対しても効果的な学習の進行を保証する．