氏名: 三田 勝史 (289834163)

論文題目: 配列データを共有した並列タスク群のための漸進処理手法に関する研究


論文概要

同一の配列データを共有する粗粒度タスクの並列実行では, 配列操作に対する排他制御により実行中断状態が発生し, 十分な並列性が達成されない状況が生じる. 我々は,このような実行中断状態を削減するためのタスクの実行制御手法とし て,漸進処理を提案している. 本手法は,配列データ全体を排他的に制御するのではなく, 配列データを部分データの集合と捉え, 個々の部分データに対して排他制御することで 配列データを共有するタスク間で効率のよい並列実行を実現する.

漸進処理の適用により,タスクでの実行中断状態の削減が期待できる. しかし,漸進処理の適用に伴いタスク間の同期頻度が増加し, 通信オーバヘッドが増加するため, 漸進処理がタスク全体の実行効率に与える影響を 十分評価した上で適用可否を判断しなければならない. そこで,我々は プログラム全体の実行時間を規定するタスク群の実行系列に対してのみ漸進処理を適 用するアルゴリズムを開発した. この漸進処理適用アルゴリズムにより,タスク全体から最適な適用箇所が抽出 され, 通信オーバヘッドの増加がタスクの実行効率に悪影響を与える可能性を 低くすることができる. また,我々は漸進処理の適用による実行中断状態の削減と 通信オーバヘッドの増加のトレードオフを考慮して, 排他的に制御する部分データの決定法を提案する. 以上のような漸進処理の適用戦略により, 通信オーバヘッドに対処し,実行性能を向上させることが可能となる.


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