プロセッサの性能を向上させるためには， 命令の実行に必要なデータが遅れることなく供給される必要がある． そのために，現在の多くプロセッサにおいて， マルチバンク化という手法でデータキャッシュをマルチポート化している． しかし，マルチバンクキャッシュではクロスバスイッチの存在により， 従来のキャッシュよりもキャッシュアクセスに時間がかかるという欠点がある． 我々はデータキャッシュにおけるロード／ストアの要求をキャッシュの 各バンクに振り分けるというクロスバスイッチの役割を， 命令を機能ユニットに発行するバスに兼ねさせることにより， クロスバスイッチをなくせないかと考えた． 我々は本論文の中で， クロスバスイッチをなくしたマルチバンクキャッシュの構成と， その実現のために必要なバンク番号の早期計算機構を提案する． さらに，提案する機構においてより高い性能向上を得るために， バンク予測による投機的命令発行の併用を提案する． 提案する構成を評価した結果，バンク番号の早期計算と バンク番号予測を用いた投機的命令発行により， 従来の構成のマルチバンクキャッシュに対して 最大7.8\%，平均5.1\%の性能向上を達成できることを確認した．