氏名: 伊達 宣之 (289834244)

論文題目: 3次元医用画像における臓器変形操作手法の開発とその胃X線CT像への応用


論文概要

従来、我々の研究室では3次元CT像を用いた診断支援システムとして仮想化内視鏡システムの開発を行ってきた。本システムではCT像より抽出した管腔臓器(3次元形状)を内部、外部から自由に観察可能である。しかしながら現在観察している対象部位のまわりとの位置、距離関係等は3次元形状で観察するよりも管腔臓器を切開し2次元平面に広げた状態(仮想的展開像)で全体を一度に観察する方がより直感的で把握し易い。そのため管腔臓器の仮想的展開像を作成することは新しい診断支援システムとして有効であり、その応用として胃領域への適用が挙げられる。医学における胃の病理診断では摘出後の切除標本を観察することで病変部の存在範囲、進展範囲等の観察を行っており、胃の仮想的展開像を作成することは新しい診断支援システムとしてだけではなく手術計画等においても有効であると考えられる。

本論文では、マウスまたは3次元力覚フィードバック装置を用いて胃を仮想的に自由に切開し、任意の仮想胃展開像を作成する手法に関して述べる。処理手順としては、まず3次元腹部CT像から胃内壁面を抽出する。この内壁面形状を基に展開基準図形を三角形パッチ数を自動的に削減することで生成し、この図形上にマウスまたは3次元力覚フィードバック装置を用いて切開線を自由に指定する。次に弾性モデルとしてばねモデルを適用し、展開基準図形を切開線に沿って展開する(展開図形作成)。作成した展開基準図形と展開図形の対応関係から3次元腹部CT像を変形し、3次元展開CT像を作成する。最後にこの3次元展開CT像から胃領域を抽出し仮想胃展開像を作成する。

本手法を胃X線CT像に適用し仮想胃展開像を作成した。得られた仮想胃展開像を実際の切除標本と比較した結果、病変部の存在する部分では実際の切除標本とほぼ同等の良好なひだ情報を観察可能であり、本手法の有効性を確認した。また本手法ではマウスまたは3次元力覚フィードバック装置を用いて切開線を自由に指定することで任意の仮想胃展開像が作成可能であり、3次元力覚フィードバック装置を用いて切開線を指定する際には、操作に応じたフィードバックも考慮することでより直感的に指定可能であった。


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