氏名: 番正 聡志 (289834287)

論文題目: 3次元画像の断面再構成および細線化アルゴリズムの改善について


論文概要

近年,3次元画像処理装置や計算機の性能の向上により,計算機で3次元画像 を扱う機会が増加している.処理対象となる3次元画像はより高精細となり, 種類も増加しており,それらを画像処理するアルゴリズムが不足している.そ のため,基本的なアルゴリズムの開発,改善が求められている.そこで本研究 では断面再構成と3次元細線化についてアルゴリズムの改善を行った.

[断面再構成アルゴリズムの改善について] 3次元物体の内部まで含めた情報 を得る場合には,CT装置等に見られるように,対象物体を様々な角度への投影 結果から断面情報を再構成する手法が用いられる.その際,正しい再構成結果 を得るためには各投影像中の回転軸の位置が既知である必要がある.しかし, 電子顕微鏡で撮影された極めて小さい対象物体の投影像から3次元画像を再構 成する場合,電子顕微鏡の回転機構や撮影範囲の制限から,正確な回転軸の位 置を知ることができない場合が多い.このような場合には投影像中に新たに仮 想的な回転軸を設定して3次元再構成する必要があるが,実際の回転軸が未知 であるため正しく設定することは困難である.そこで本研究では,このように 回転軸の位置が未知である投影像の組から再構成結果を行う場合に,得られた 3次元再構成に対する濃度値エントロピーを用いた評価値をもとに,正しい仮 想的回転軸位置の推定を行い,再構成結果の画質を上げる手法を提案した.こ の方法を用いて人工図形を用いた実験と,実際の透過形電子顕微鏡によって撮 影された投影像に対する実験を行った.その結果,人工図形に対する実験では 投影像に加えたずれを概ね正しく推定できていることを確認した.また,電子 顕微鏡像実験においても目視によって良好な画質の再構成結果を得ることがで きることを確認した.

[スケルトンを用いた3次元細線化アルゴリズムの改善] 人体内の様々な器官 を対象とした3次元画像に対して画像処理を行う際に,3次元細線化は基本的な 手法の一つである.しかし,一般的に使われているユークリッド距離変換を用 いた細め型細線化では,形状雑音により多くのひげが生成され,その後の画像 処理の精度を低下させる原因となっていた.そこで,気管支や腸など,人体に 多く見られる円柱状の器官を抽出して得られる3次元2値図形に対して,ひげの 量を調節できるように細線化手法を改善した.この手法を気管支,大腸などの 3次元2値図形に適用し,ユークリッド距離変換を用いた細線化との比較から, ひげの量が減っていることを確認した.


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